灰谷健次郎さん 「兎(うさぎ)の眼(め)」などの作品で人間の心の優しさを描くとともに、教育問題にも発言した児童文学作家の灰谷健次郎(はいたに・けんじろう)さんが23日午前4時30分、食道がんのため静岡県内の病院で死去した。72歳。葬儀は近親者で行い、お別れの会などは行わない。自宅、喪主は非公表。
神戸市生まれ。大阪学芸大(現大阪教育大)卒業後、小学校教諭を務めたが、学校管理が強まるなか退職。沖縄やアジアを放浪した後、作家活動に専念する。74年に発表した「兎の眼」は、女性教師と子供のふれあいを通じて真の教育のあり方を問い、国際アンデルセン賞特別優良作品に選ばれた。また「太陽の子」と合わせて、路傍の石文学賞を受賞した。両作品は映画化され、「兎の眼」は大人にも読まれベストセラーになった。
80年に神戸市から兵庫県・淡路島の山中に移って自給自足の生活を始めた。その後も沖縄県の渡嘉敷島、静岡県熱海市に転居を繰り返し、独自のライフスタイルで執筆を続ける傍ら、83年には自らの教育理念に基づく保育園を神戸市に作った。
97年には神戸・小6男児殺人事件で新潮社の写真週刊誌「フォーカス」が容疑者の少年の顔写真を掲載したことに抗議し、「兎の眼」など約30作品の版権を引き揚げた。04年12月に食道がんの手術をし、今年9月に再入院していた。
他の著書に、短編集「ひとりぼっちの動物園」(小学館文学賞)、長編小説「天の瞳」、「灰谷健次郎の本」(全24巻)、「灰谷健次郎の発言」(全8巻)など。
▽映画「兎の眼」で教師を演じた檀ふみさん 「兎の眼」はすばらしい作品で、登場人物もしっかり描いておられた。映画では思うように演じられず、今でも胸が痛みます。やさしく繊細で傷つきやすい少年の心を持った方で、世の中の悲しみをみつめるような鋭いまなざしも印象に残っています。他方、ちゃめっ気もあり、離島に家を建てたのでとお誘いを受け、お風呂が、外から丸見えだと、笑って明かされたこともありました。
(毎日新聞) - 11月24日10時14分更新